はてなダイアラー絵本百選 『バムとケロのさむいあさ』

やっと書きました。もう少し編集というか、細かいところは書き直すかも知れません。

まず「誰の絵本を取り上げるのか」について。スキャリーおじさんの動物シリーズ*1も好きなんですけど、子供の頃に読んだ絵本ではなくて、中学生から高校の頃(じゅうぶん子供という気もしますけど)に出会った絵本を紹介したいのです。絵がすごく好きで、小物とか小さい生きもの(っぽい)ものとかが、どれも嬉しくなるほど楽しい本でした。
その本は島田ゆかさんの「バムとケロ」シリーズ*2です。ブルテリア(だと思う。イマイチ自信ない)のバムくんとカエルのケロちゃんのコンビが、ちっちゃい犬*3やちっちゃい3本耳(?)の動物*4などと繰り広げる、ちょっとドタバタの楽しい日常生活が舞台で、その絵の中の情報量というか、細かいところの遊びがたまらなく楽しくて、何度も読み返してしまうのです。そのたびに「こんなところに!」って発見があるんです。

それではこのシリーズについて。この「バムとケロ」のシリーズは現在4冊出版されています。

  1. バムとケロのにちようび
  2. バムとケロのそらのたび
  3. バムとケロのさむいあさ
  4. バムとケロのおかいもの

以上の4冊です。
また、シリーズ外ですけど同じ世界観の絵本としては

以上2冊の「ガラゴ」シリーズもあります。こちらも楽しいです。

島田さんの特徴かも知れませんけども、主人公は決して一般的に可愛いと形容されるような容姿ではないと思います。誤解を恐れずに言えば、むしろ可愛くないくらいの。それでも彼らはとてもキュートです。多分読んでいただければすぐ分かってもらえると思う。そのデザイン的にもキャラ(性格)的にも魅力的な造形が、本そのものの魅力の一つでもあるでしょう。

ちょっと横道でした。改めて「バムとケロ」シリーズについて。主人公は、先ほども書いたように犬のバムくんとその名の通りカエルのケロちゃんの2人(?)です。2人は一緒に生活をしていて、特にバムの方がよりケロちゃんのお世話をするお兄さん的役割のようです。どうして一緒に暮らしているのか、とかほかに一緒に住んでいるらしい小さな犬は何なのかなど、説明されない点も多いのですが、そういったことを考えたりしながら画面の隅々まで目を配らせるのも作者の島田ゆかさんの作戦かも知れません。小さな頃に、友達同士で楽しく暮らしたりしてみたいという、人形遊びの延長に広がっていた空想の中の生活。それを見せてくれている作品だと思います。
ワタシはどうにも夢見がちというか、すぐ想像の中で遊んでしまう子供だったので(笑)、こんな暮らしには今でもちょっと憧れます。自分が子供の頃にこの本があったらきっと一日中この中でバムやケロたちと遊んでいたでしょう。

そこで今回取り上げるのは、ワタシが最初に読んだこのシリーズの本。

バムとケロのさむいあさ

バムとケロのさむいあさ

『バムとケロのさむいあさ』にしたいと思います。

出会いは偶然でした。一番近所の本屋さんに行ったとき、絵本コーナーに見覚えのない本が入ってて、どうやら注文のキャンセルだったようでいつもは扱ってない出版社の*5本でした。その本屋さんも今はもう無いのですけども。奥付には96年の12月発行と書いてあります。でもワタシが手に取ったのは3年後の99年のことです。高校入学の年の初夏でした。季節はずれの冬の本だったので特に目を引いたのを覚えています。
その頃のワタシは、選択教科を部活*6の関係で音楽にしていたため、絵本に限らず絵は好きだったんですけど、美術の授業のように自分で描いたりいろんな絵を見たりする機会が減っていたことを、少しだけ残念に思っていたのです。もちろん自分で美術館へ行くなりの行動を取れば良いことですし、好きといっても上手かったわけではなかったのですから、描く機会がないことも今にして思えばそれほど残念だったのでは無いはずなのですけど。それだって好きなら自分で描いてれば良かったことですし。これはやっぱりしなくなると何だかそれが自分にとって重要な気がしてくるだけという、ただのコドモ的なワガママだったのでしょう。
逸れました。そんなときに出会ったのがこの本で、それから夏休みにかけて当時出ていた「バムとケロ」シリーズを4冊とも集めることになりました。ちょうどその年の2月に、4冊目が出ていたのです。

最初に読んだのはこの3冊目の『さむいあさ』だったんですけど、シリーズを揃えてから改めて順に読んでいくと、『にちようび』はもちろん日曜日のお話で、『そらのたび』は月曜、『さむいあさ』が火曜、そして『おかいもの』が水曜日という具合に毎日の2人の生活を曜日を追って見ているような構成となっています。季節の変化もありますから本当に次の日ってことじゃないとは思いますけど、その構成もまるで毎日彼らを眺めているような気持ちに読者を誘うのではないでしょうか。
内容では、それぞれ1冊ごとに大きな目的がある*7ものの、画面の細かいところまで行き届いた遊びと色彩を楽しむ種類の本だと思います。ストーリーを追いながら、そのお話とは時に関係し、時に関係なく動き回る脇のキャラたちを画面の中で探し回る。それが大きな楽しみの一つであることは間違いないでしょう。多分何度でも楽しめるところだと思います。そんな楽しみがありますから、もちろん1冊目から読むのが一番楽しみが多いとは思いますけど、どれか一冊を選んだとしても面白さは変わらないんじゃないかと思います。

絵について。絵に関しては細かさの度合い(遊びの量)も、色の鮮やかさも、さすがに巻数を重ねた後の方が上であることは間違いありません。そして遊びについては、前の巻までに出てきたキャラたちや小物類がキチンと生かされていて、それらを探す楽しみもあります。先にも書いた、まったく名前の出てこないとても小さな犬がいるのですけど、実は4冊目の絵の中のちょっとしたところで、名前を明かされていたりするのです。

改めて『さむいあさ』について。この本は冬の寒い朝に、裏の池に氷が張ったことを予想して2人が遊びに行くことから始まるのですが、その池では星を見ているうちに凍ってしまった(!)あひるの「かいちゃん」を助けて、家に連れて一緒に遊ぶ、という1日を描いたお話です。池の近くの木に住んでいるネズミさんがすごく小さいヤカンを持って、かいちゃん救出を手伝いに来るものの、ヤカンを氷に置いたために沈んでいってしまうとか、画面の隅の遊びも冴えています。
かいちゃんを連れて帰った2人は、特にケロちゃんが張り切ってしまって楽しませてあげようといろいろなおもちゃを持ち出してきたり、トイレットペーパーで「ミイラごっこ」を始めたりと大騒ぎ。いつもはお世話されることの多いケロちゃんもちょっとお兄さんぶって見たくなったのでしょう。その姿が何とも微笑ましくて、大好きな本です。子供なればこそ、自分より小さい子やペットなどに愛情を注ぎたがるような、その気持ちに覚えがありすぎるので他人事とは思えないのです(笑)。
あとこの本のワタシ的に重要なポイントを一つあげて、この長くかかった(結局は)自分語りを終わりたいと思います。
それはこれが「冬のお話」であることです。ワタシが北海道民だからということ…ではなくて、ほかの本よりとっても衣装が可愛いのです。小物の楽しさが特徴の一つである島田さんの絵本でも、冬に外に遊びに行くために出てくるキャラたちがみんな可愛いコートや耳当て、手袋に釣り道具(冬関係ない)を身につけていて、それらを眺める楽しみも大きいのです。やっぱり薄着は苦手ですので(笑)、そろそろ上着も必要な季節、どんな重ね方をしようかといったことは、寒い地域を楽しむ大きなポイントではないでしょうか。

最後にもう一つ。表紙のカバーからその裏まで、どの絵も見逃してはいけません。とにかく一枚いちまい、隅々まで何度も楽しめる、そこがワタシがこの絵本を大好きな理由なのです。
手にとってくれる方が増えてくれますように、の思いを込めて。そうすれば木曜日より後の本も、きっと読めるようになると思いますから(笑)。

というわけで、ふってくれリストに名乗りを上げたのがまだ8月の末で、バトンをいただいたのが9月の9日(!)という具合にすっかり1ヶ月も引っ張ってしまいました。その上こんな程度か、と思いこみの割に書き込めない自分への苛立ち込みで反省しています。
それでは次の方へのバトンですが、ふってくれリストの一番上の方にお願いしようと思っていました。ですのでid:himage さん、よろしくお願いいたします。紹介されてる本、けっこう興味深かったです。西島大介さんとか。

*1:http://www.omsi.edu/visit/discovery/Busytown/index.htmlなど。

*2:絵本作家 島田ゆか のサイト、バムケロページをどうぞ。

*3:ヤメピ。しばらく名前は出てこない。

*4:オジギちゃん。この子も改めて名前は出てこない。

*5:文溪堂です。

*6:吹奏楽部でした。

*7:例えば『そらのたび』ではバムのおじいちゃんの家まで飛行機で遊びに行くとか、『おかいもの』では市場に買い物に行く(そのまま!)とか。