フィラメント

この間タイトルだけ書いたマンガ*1。読みました。最初の2本が最近の作品で、中書きのあとは以前ラポートで出た別名義の単行本からの抜粋だそうです。だから後半は絵が今とは違ってて面白かった。違うといっても普通は今に通じる傾向はあるわけですけど、ホントに同じ人かと思うくらいイメージが違いました。多分顔の描き方(特に”目”の描き方)が違うのが印象を変えてるんでしょう。あと顔の輪郭も。お話の手触りみたいなところは当然ながら地続きの感触もあるのですけど、『蟲師』がいつか分からないとき・どこか分からない場所を舞台にした仮想のお話であるのに対して、こちらは基本的に現実を舞台としているので自然と違いも目につきます(その点では今回収録された新作もどちらかというと現実よりの舞台でしょうか)。一番目につくのは語り口の違いでしょうか。舞台の違いとは裏腹に、「お話し」としては今よりも以前の作品の方が叙情的で夢のよう、最近の作品の方がキッチリ説明がついて収まりが良い。もちろん収まろうとする端から逃げて行くような不可思議さも残りますけど。ここにあるのが作家としての原形であれば、それは帯にもあるような「結晶」なのかも知れませんし、そこから現在へつながるのは細い糸〜フィラメント〜かも知れません。そしてしっかりと光っている。好ましい作品集だと思いました。

お気に入りは「虫師」の2本(今の「蟲師」の原形ですがまったくの別物)と新作の「迷宮猫」です。とくに「猫」の方はどこにどうつながってるのか分からないほど迷路化した大きな団地、というイメージがとても好み。10ページほどの掌編ですけども、小さい頃に行った親戚の家が大きな集合住宅の上の方の階で、一人で探検ごっこをした挙げ句帰るべき部屋を見失って泣きそうになった*2ことを思い出しました。当時のワタシにとっては巨大建築だったと思う。嫌いになりそうなものですけども、そのときのドキドキ感というか焦りとともに胸の中がきゅうってなる感覚が実は好きです。速いものは苦手なのでジワジワ来るのに惹かれるのかも。危険な傾向です。

ジャスコなんかの大きなショッピングセンターは、とりあえずワクワクしますから。今はもう迷子にもならないですし(笑)。

*1:id:momochill:20040925#1096101071

*2:ホントは号泣して見つけてもらった(笑)。